ハレとケについて

当院の考える「ハレとケ」とは  

ハレとケについて

「陰陽」と「ハレとケ」ーー丁寧に生きるための東洋医学の知恵

皆さんはこの図を見たことがありますか?
これは「太極図(たいきょくず)」と呼ばれ、東洋医学の基本思想である「陰陽(いんよう)」を表しています。
図の黒い部分は「陰(いん)」、白い部分は「陽(よう)」を表しており、ひとつの円の中で陰と陽が入り混じり、循環しながらバランスをとっている様子が描かれています。

陰陽太極図

陰陽論とは?

陰陽論では、あらゆるものを「陰」と「陽」に分けて捉えます。

  • 上があれば下がある

  • 外があれば内がある

  • 熱い時もあれば寒い時もある

このように、ひとつの事物に対して対をなす二つの側面を「陰」と「陽」として考え、その関係やバランスから物事の本質を読み解こうとします。
陰と陽がうまく調和し、バランスよく巡っている状態こそが「最も良い状態」であり、これは私たちの身体にも当てはまります。
すなわち、「陰陽のバランスが取れている身体」こそが、健康な身体なのです。

「ハレとケ」もまた陰陽である

この考え方は、私たちの暮らしに根づく「ハレとケ」にも通じています。

  • ハレ=特別な日、お祝いごと、非日常

  • ケ=日常、普段の暮らし、何気ない日々

私たちの生活は、どちらか一方だけでは成り立ちません。
忙しい毎日の中でも、ほんの少しの休息や非日常をありがたく感じるのは、「ケ」があるからです。

食事で考える「陰陽」と「ハレとケ」

私が特にこの陰陽やハレケのバランスを感じるのは「食事」の場面です。
かつての日本の食卓では、ご飯と漬物といった質素な「ケ」の食事が日常で、魚や肉などは「ハレ」の料理として、祭りや祝い事のときに登場しました。
しかし、現代では「ハレ」の料理も簡単に手に入り、日常的に食べられるようになりました。
それ自体は素晴らしいことですが、「ハレ」の食事ばかりでは、胃腸にも心にも負担がかかります。
「ハレ」が増えることで聞こえは良いかもしれませんが、実際には陰陽のバランスが崩れてしまっているのです。

「ケ」を大事にすること=自分を大切にすること

私は、「ケ」の時間を丁寧に過ごすことこそが、陰陽・ハレケのバランスを整える鍵だと考えています。

  • 目の前のことを丁寧に行う

  • 季節の移ろいを感じて、自然に沿った暮らしをする

  • 自分の身体と心の声に耳を傾ける

このような日々の積み重ねこそが、心身を整える「ケ」の過ごし方です。

鍼とお灸は「陰陽」を整える手段

そんな「ケ」を大切にする生活に、鍼灸(しんきゅう)はとても相性が良いと私は思います。
薬や手術がなかった時代から、人々の身体と向き合い、自然治癒力を引き出す手段として使われてきた鍼とお灸。
全身のバランスを整え、「働きすぎているところ」「眠っているところ」に適切な刺激を与えることで、本来の健やかな状態=整った陰陽バランスに戻す手助けをします。
また、定期的に鍼灸を受けることで、そもそもバランスが大きく崩れにくい身体を作ることもできます。

陰陽が整うと、心も身体も、生活も整う

身体の陰陽バランスが整えば、心も落ち着き、生活全体が調和に向かいます。
「整える」というのは、「戻す」ということ。
頑張りすぎる日々の中で、ふと立ち止まり、自分自身を見つめ直す。
そんな時に、鍼やお灸がきっと力になってくれるはずです。

ハレとケちゃん
 

院名に込めた想い

当院の名前「ハレとケ鍼灸院」には、鍼と灸を通して患者様の“陰陽”のバランスを整え、より良い「ハレ(特別な日)」と「ケ(何気ない日常)」を送っていただきたい――そんな願いが込められています。
ロゴに描かれているお茶碗は、日々の「ケ」を象徴する、何の変哲もない普段使いのお茶碗がモチーフです。
それは、当たり前のように過ぎていく日常こそが、実はかけがえのないものであるという気づきを大切にしたいという思いから。
また、食事と同じように、鍼灸も患者様の日常の中に自然と溶け込み、暮らしの一部として寄り添っていけたらという願いも込めています。
「ハレ」の時も、「ケ」の時も。
どちらの日も大切に、より良い毎日を過ごしていただくために――
ハレとケ鍼灸院は、皆さまの「ハレとケ」を、そっと支える存在でありたいと考えています。